本記事は、Magdalena Firlit さんによる「What should be the focus for the Product Owner?」を翻訳したものです。翻訳・公開にあっては、Magdalena さんに快諾いただいております。誤字脱字、誤訳を見つけた場合は、ぜひご指摘ください。
最も直接的な答え
プロダクトオーナーが注力すべきことはなんでしょうか?最も直接的な答えは…、
もちろん!価値 となります。
しかし、どうやって価値に到達するのでしょうか?
プロダクトオーナーの実際
大半のプロダクトオーナーは、要求を作成するところから仕事を始めます。状況によっては、これらの要求のスコープを他の人から頼まれることもあります。プロダクトオーナーの仕事は、主に要求を記述することから成り立っているため、プロダクトオーナーの役割は、書記のように見えてしまいます。
これらの要求のアイテムは、どのような背景で、プロダクトバックログに並ぶのでしょうか?
残念ながら、この優先順位は、「そうらしい」、「言われたから」、「利害関係者が望んでいるのはこういうことだから」などに基づいています。
価値のある要求を作成するにはどうしたらよいでしょうか?
ビジョンから始める
おのおののプロダクトオーナーは、ビジョンによって駆動し、組織やプロダクトを開発しているチームをインスパイアできるべきです。プロダクトのビジョンは、短かく、理解しやすく、期待がもて、プロダクトに関する必要な情報が記述されていなければなりません。
- 誰のために、このプロダクトをデリバリーするのか
- このプロダクトは、どのようなニーズを満たすのか
- このプロダクトは、どのような価値をもたらすのか
ビジョンテンプレートはさまざまなものがあるので、それらから選択することができます。特に私が気に入っているのは、エレベーターピッチです。エレベーターピッチは、短かく(30秒〜2分程度)、簡素で、メッセージを伝えるのに十分です。エレベーターピッチ以外の他のプロダクトビジョンテンプレートも試してみることをお勧めします。
ビジネス戦略に注力する
ビジネス戦略を作成している間、利害関係者、チーム、そしてこの過程を手助けしてくれるすべての人を招待することはとても価値があります。この時点で、ビジネスモデルキャンバス、バリュープロポジションキャンバスなどのビジネス戦略のテンプレートを選択することもできます。確かに、以下を覚えておく必要があるでしょう:
- ペルソナ(誰がユーザー/顧客か)
- 価値の定義
- 利用可能な人たち
- リソース(ソフトウェア、ハードウェアなど)
- コスト構造
- 可能な収益源
- 競合の活動(もしあれば)
- その他の関連する情報
これらのデータによって、ビジネス上の意思決定がしやすくなります。私は、ワークショップ形式でのビジネス戦略の立案を強く推奨しています。プロダクトが社内プロダクトであっても、通常のプロダクトと同じように扱い、誰がユーザーなのか、ユーザーにとってどのような価値があるのか、予算はどうなっているのか、などを意識しておきましょう。
ビジネスゴール
- 何を達成したいのか?
- どのような影響が組織にあるか?
- どのような影響が顧客(ペルソナ)にあるか?
- 彼らの行動変容はあるのか?
- そのために何が必要なのか?
この時点でのみ、要求の検討を始めることができます。要求は、エピック、フィーチャー、ストーリーなどよくアイテムと呼ぶものをです。
アイテムは、ゴールと価値に対して二次的なものです。アイテムはゴールと価値の結果です。道具としては、インパクトマッピングなどのテクニックが役に立つかもしれません。
プロダクトバックログ
プロダクトバックログは、次の順序で優先順位付けする必要があります:
- 価値
- リスク
- 依存関係
- 市場投入時期(ロードマップの可視化が役に立つ)
- プロダクトと組織の観点から重要な他の可能な変数
また、以下と一致している必要があります:
- ビジネスゴール
- ビジネス戦略
- プロダクトビジョン
多くの場合、組織のプロダクトバックログでは、ずっと前に提示されたスケジュールにしたがって優先順位付けされていることがあります。もう一つ考えられる理由は、利害関係者からのプレッシャーです。プロダクトバックログが、価値に基づいて更新されることがほとんどなくなります。しかも、価値観がほとんど用いられません。最もよくあるパターンは、「デリバリー カルト」(より多く、より速く)です。問題は、チームがユーザーや顧客、組織とって価値のあるものを提供できているかどうかなのです。
次に何をするか?
プロダクトの価値は、測定する必要があります。計測は、現時点と到達する実現可能性について行います。意思決定は、この価値に基づいて下すべきです。多くの組織では、事実に基づいて意思決定が行われていません。プロダクトの現状を考慮せずに、予測と総合的な計画を頼っています。
これでは、適応のための環境と受け入れが足りていません。つまり、実証的アプローチが足りていません。
プロダクトオーナーは何に注力すべきか?
繰り返しになりますが、プロダクトオーナーは、価値に注力すべきです。価値とは以下から得られます:
- ビジョン
- 顧客や組織のニーズ
- 顧客/ユーザーの満足度
- ビジネス戦略
- 定量化できる価値
- 可能性
プロダクトバックログの優先順位付けは、これらの要素に基づくべきです。学習を続け、変化のための証拠を提供し続けることで、実証的なデータを用いて確認しましょう。
Magdalena さんによる「組織的にプロダクトオーナーの役割を強化する方法」もぜひご一読ください。
本記事の翻訳者:
長沢 智治 – アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。