この記事は、Nichervan Fazelさんの「What is Velocity?」を翻訳したものです。翻訳はNichervanさんの許諾をいただいています。誤訳、誤字脱字がありましたら、ご指摘ください。
ベロシティとは
アジャイルとスクラムの文脈においてのベロシティとは、スクラムチームがスプリント中に完成できる作業量を計測するために用いる指標だ。ベロシティにより、チームが将来のスプリントで対応できる作業量を予測するのに有用なインサイトを得られる。ベロシティはチームが選んだ作業の単位で表現される。ストーリーポイントやタスク数などがそれだ。
訳註: 以下、見出し直後の一文は読む易くするための訳者による追記である
スクラムチームでのベロシティの使い方
スクラムチームにおいてベロシティとは以下のように活用される。
- 予測可能性(見通し)
ベロシティは、スクラムチームが次以降のスプリントにどれだけの作業を投入できるかを予測するのに役に立つ。過去数スプリント分の平均ベロシティを計算することで、チームはスプリントゴールを達成するために次のスプリントに投入できるユーザーストーリーやタスクの数を予測できるようになる。 - キャパシティプランニング
チームは、ベロシティを用いてそれぞれのスプリントに適切な作業を割り当て、持続可能な作業のペースを作るのに役立てる。 - ボトルネックの特定
チームのベロシティが多く変動したり、一貫して低下していったりする場合は、対処すべき根本的な問題やボトルネックを示している可能性がある。 - 継続的改善
ベロシティは、時間の経過とともに改善されているかどうかを確認するための指標として用いることができる。ベロシティが一貫して向上しているということは、チームが阻害要因に対処し、より自己管理できるようになっていることを示している可能性がある。
訳註: 原文では箇条書きが数字になっているが、序列に意味がないと判断した
ベロシティのメリット
ベロシティには以下のメリットがある。
- 予測
ベロシティは、チームの将来的な仕事を予測する根拠となり、チームの計画立案に役立つ。 - 透明性
この計測指標は透明性が高く、スクラムチーム全員がアクセスできるため、全員が見積もりプロセスを理解し、貢献することにつながる。 - 継続的改善
ベロシティを追跡することで、チームは改善すべき領域を特定し、時間をかけて変化を実践することができる。
訳註: 原文では箇条書きが数字になっているが、序列に意味がないと判断した
ベロシティを用いる上での注意点
ベロシティは有用だが、以下のことに注意する必要がある。
- ベロシティと価値の混同
ベロシティは、価値を表しているないことに注意したい。ベロシティが高ければビジネス価値が高いというわけではないのだ。 - チーム間での比較
ベロシティを異なるチームのパフォーマンスの比較で用いることは、誤解を招く可能性につながる。 - ベロシティだけに注力
成功の唯一の尺度としてベロシティに過度に依存すると、チームが質よりも量を優先してしまい、顧客に提供すべき価値が損なわれる可能性がある。 - チーム編成による変化
ベロシティは、チーム構成の変化、新たなチームメンバー、チームきぞの変化などの要因によって影響を受ける可能性がある。
まとめ
我々は「コックピットデータ」という言葉を使っているが、これは民間航空機でパイロットが大量のデータにアクセスできるという例えからきている。データは、パイロットが判断し、軌道修正するために利用できるものだ。乗客としては、データを見る必要はなく、安全に目的地に着くことだけに興味を持てばよい。
ベロシティとは何か、ベロシティがチームの判断や改善のためにどう使われるのか、そして、チームを叩くための材料ではないことをステークホルダーに理解してもらう必要があるのだ。
もしもマネジメントがベロシティを倍にするように求めてきたら、それはとても簡単なことだ。現在のベロシティを2倍にして算出すればいいだけだ。
より良い会話とは、チームの能力をはまたげている障害物や問題のリストをステークホルダーやマネジメントと共有し、それらの阻害要因を取り除くために彼らの支援を求めることなのである。
ベロシティは、スクラムチームにとって価値のあるツールであるが、チームのパフォーマンスと進捗を包括的に把握するためには、他のメトリクスや考慮事項との組み合わせが必要であることに注意することが重要だ。集中すべきは、常に顧客に価値を提供し、チームの効果性と効率を継続的に改善し続けることであるべきなのだ。
訳註: 下記記事も参考になりますので、併せてご覧ください:
本記事の翻訳者:
長沢 智治 – アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。