クネビンフレームワーク
クネビン(Cynefin)フレームワークとは、元IBMのデイビッド・スノーデンが開発した問題解決のフレームワークです。Cynefin は、ウェールズ語で、生息地という意味です。
クネビンフレームワークの講演
クライアント様のご要望でクネビンフレームワークを説明させていただくことが増えています(ご時世からオンラインでが100%です)。背景としては、「正解がない」多様化した問題と現実解に対しての理解を深めることが第一義です。第二儀としては、アジャイルの必然性の腹落ち感があります。
クネビンの問題領域(生息地)は、5つあります。無秩序、混沌、複雑、煩雑、単純と訳すことが多いです。それぞれに対して対処方法が異なることを理解しておくことが必要です。ただ、それ以前に今抱えている問題がどの領域なのかを理解することが大事です。今いるところがどこで、どうアプローチすればいいのかが、チームや組織、顧客との間でコンセンサスが取れれば、一丸となって問題と向き合うことができるでしょう。そうでないならば、空中戦であり、雲を掴む話となり、絵空事で終わってしまうかもしれません。
スノーデンによって単純・明白(simple/obvious)は、明確(clear)と提唱されているため、現在は、明確系を使っています。
どの問題領域にいるのかは誤解や錯覚に陥りがちです。ここでは、認知バイアスに気を付けることが大切です。人は過去の経験にすがり、肯定し、楽観しがちです。例えば、本当は複雑か煩雑な状況なのに、単純だと信じたい気持ちが生じてきます。本当は無秩序であったり、混沌としており、どうしてよいのかわからないのに、ベストプラクティスがあるはずだと信じたくなります。
問題領域と解決アプローチとしてのアジャイル
詳細解説はしませんが、問題領域がわかればそれにあったアプローチが取れるはずです。探究的で、実証的なアプローチとしてアジャイルは、主に「複雑」領域で活きてきます。それに対して、ウォーターフォールなど、定義可能で、全体像が見えているアプローチは、「単純」「煩雑」領域で活かせる可能性があります。
この辺りの詳細は、「複雑さの歩き方」にて解説してあります。よろしければこちらもご覧ください。
先述のように、問題領域は錯覚しがちであり、楽観的に評価しがちなため、「単純」だと思ったら、「煩雑」。「煩雑」だと思ったら「複雑」ということがよくあります。実際に取り組んでみないとわからない場合もあります。その際は、楽観的に評価するのではなく、一つ難易度の高い領域だと思って、その領域に適したアプローチをとってみましょう。そうすれば、アプローチから問題領域を正しく評価しやすくなるはずです。
例えば、煩雑領域だと思ったら、複雑領域としてアプローチしてみます。すると、すべてが煩雑領域だったと発見できるかもしれません。または、複雑な部分の中で、煩雑な部分を見出し、煩雑な部分はより定義されたグッドプラクティスが適用できるかもしれません。
しかし、逆であったならば。すなわち、複雑領域の問題を煩雑領域として対処しようとしたらです。すると、適さないアプローチを行うことになり、それまでの労力がすべてムダになってしまう恐れがあります。なぜならば一度決めたことを覆すにはバイアスを取り除いたり、適していないことを客観的に評価するきっかけが必要になるからです。でも一度走り始めてしまった誤ったアプローチにその機会はなかなか与えられないわけです。
講演+ディスカッション
講演だけではなく、ディスカッションを含めたご依頼をおすすめしています。ただ聞くだけで終わりにするのではなく、ディスカッションすることで理解が深まり、現場指向で問題と向き合えることになります。いつでもお手伝いしますので、お声がけください。
本記事の執筆者:
長沢 智治 – アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。