翻訳記事

この記事は、Sanjay Saini さんによる「Product Owner as a Servant-Leader」の翻訳です。翻訳にあたって、著者の Sanjay さん(LinkedIn) の承諾をいただきました。誤字脱字や誤訳がありましたらご指摘お願いいたします。

スクラムでのサーバントリーダーは誰なのか

「スクラムにおけるサーバントリーダーとは誰のことですか?」と尋ねると、最もよくある答えは、「スクラムマスター」です。この回答は、『スクラムガイド』(2017年11月)に書かれている通りです:

スクラムマスターは、スクラムチームのサーバントリーダーである(訳注:メンバーが成果を上げるために支援や奉仕をするリーダーのこと)。

『スクラムガイド』(2017年11月)

サーバントリーダーになれるのは、スクラムマスターだけなのでしょうか?スクラムの環境における重要なマネジメント原則として、サーバントリーダーシップは、スクラムマスターの役割だけに限定されるものではないと言いたいです。スクラムチームのそれぞれの役割は、スクラムチームでも、その外部に対しても、誰かにとってのサーバントリーダーであると言えます。ここでは、サーバントリーダーとしてのプロダクトオーナーを探究していきます。

サーバントリーダーとしてのプロダクトオーナー

私は長い間、サーバントリーダーとしてのプロダクトオーナーについて考えてきたのですが、Gunther Verheyen が私の意見が一致していることがわかりました。Gunther は、素晴らしい指摘をしてくれ、『How to lead in product management』(Roman Pichler, 2020)を読むことを提案しています。この本では、優れたプロダクトオーナーになるために必要なさまざまなスキルについて深く掘り下げています。典型的なプロダクトとドメインの知識に加えて、サーバントリーダーシップの一部である多くのコーチングや会話のテクニックを説明しています。

サーバントリーダーの起源

「サーバントリーダーシップ」という言葉は、Robert K. Greenleaf が『The Servant as leader』というエッセイで作った造語です。このエッセイで、Greenleaf は、次のように述べています。

サーバントリーダーは、サーバントファーストである。それは、人が最初に奉仕したいという自然な気持ち、先に奉仕することから始まる。

『The Servant as leader』

サーバントファーストなプロダクトオーナー

階層的な権限を持たないプロダクトオーナーも「最初に奉仕」をします:

  1. プロダクトオーナーは、最も価値のあるユーザー機能/プロダクトを提供することで、顧客やユーザーに奉仕する
  2. プロダクトオーナーは、会社の包括的な目標やミッションに沿って、組織とスポンサーに奉仕する
  3. プロダクトオーナーは、プロダクトバックログのアイテムを明確に表現することで、開発チームに奉仕し、チームが最も価値のある成果(アウトカム)を生み出すことに集中できるようにする
  4. プロダクトオーナーは、ビジネス上の課題やニーズを理解する手助けをすることで、スクラムマスターに奉仕する
  5. プロダクトオーナーは、実証済みかつ経験的なデータに基づいて意思決定を行うことで、組織のビジネスおよびプロダクトマネジメント部門に奉仕する

Greenleaf は以下も述べています:

… 他の人たちの最優先のニーズに確実に応えられるようにするために奉仕する。最も優れた試験で管理がするのが困難なのは次のような点です: 奉仕される人が成長するか?奉仕されている間に、より健康的で、賢く、自由で、自律的になれるだろうか?

『The Servant as leader』

これはプロダクトオーナーにも適用されます:

  1. プロダクトオーナーは、プロダクトビジョンからすべての作業を推進し、開発チームが一貫したユニットとして作業できるように促す
  2. プロダクトオーナーは、顧客やユーザーのニーズに応え、問題を解決することで、顧客やユーザーに奉仕する
  3. プロダクトオーナーは、プロダクトのビジョンと戦略に沿って全員を連携させることで、スポンサーやより広い組織に奉仕する
  4. プロダクトオーナーは、新たな実験を試すことで、スクラムマスターが経験主義に取り組むのを手助けする
  5. プロダクトオーナーは、現場に朝鮮することで、将来に向けて皆を鼓舞し、一致団結させる

サーバントリーダーは、主に人々と彼らが所属するコミュニティの成長と幸福に注力する。

『The Servant as leader』
  1. プロダクトオーナーが成功するかどうかは、ユーザーのニーズや問題に対処できるかどうかにかかっている
  2. プロダクトオーナーは、プロダクトの実装するニーズや目標および解決策の発見と理解に関わるすべての人を手助けする
  3. プロダクトオーナーは、顧客、スポンサーおよび組織のための価値創造に注力する
  4. プロダクトオーナーは、開発チームが行った作業がどのように価値を付加しているか、ユーザーと顧客にどのように影響を与えるかを理解することで、開発チームの成功に注力する
  5. プロダクトオーナーは、適切なプロダクトを開発するために開発チームをコーチングやメンタリングすることで、スクラムマスターを手助けする

あなたはプロダクトオーナーですか?開発チーム、スクラムマスター、ユーザー、顧客、組織に対して何らかの形で奉仕するサーバントリーダーのように感じたことはありませんか?

ビジョナリー、アントレプレナー、スポンサーなどの既存の肩書きに加えて、あなたが何をしているのかを説明するために「サーバントリーダー」という肩書きを付け加えてもよいかもしれません。

役割が広がることを楽しんでください。ハッピーなサーバントリーダーシップを。

本記事の翻訳者:

長沢智治

長沢 智治 – アジャイルストラテジスト

サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。

DASAプロダクトマネジメント認定トレーナー
DASA DevOpsファンダメンタル認定トレーナー

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

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