※ コラムです。反響がありましたら続きを書くスタイルといたします。
正解がありすぎる
マーケティング的には、「正解がない」時代と表現することが多いですが、これは言い換えれば、「なんでも正解にできる」、「どれも正解である」とも言えます。共通しているのは、やってみないと正解かどうかは判断できないということです。やる前には正解かどうか判断つかないのです。
こういう時には、従来の「正解がある前提」のアプローチは適さないかもしれません。少なくとも従来のアプローチとは別のオプションは備えておくべきでしょう。
では、別のオプションとは何かです。
正解があるときのアプローチ
正解があるということは、行き着く先であるゴールがわかっているということになります。したがって目標設定を確実に行えることとなるでしょう。その上で、そのゴールに行き着くための包括的な計画を立てることができるはずです。これは、いわゆる「線形」と呼ばれる状況下です。y = f(x)
が成立しているのです。
この場合は、ゴールに向けた包括的な計画を立て、その計画に基づいて作業を分解して(WBS)、そこに人を割り当てて、それぞれの作業の進捗をはかるというアプローチがとれるはずです。したがって、計画と進捗が大事となります。このアプローチでは計画と作業が明確なことが多いので、極論、どんな人が作業を行うかはあまり重要ではありません。なぜなら、その作業は過去にも行ったことがあったり、ある程度その作業を行えるスキルがあれば実施できるくらいに詳細化されているべきだからです。
正解がありすぎるときのアプローチ
それに倒して、正解がありすぎるときのアプローチはどうでしょうか。
まずは、正解があるときのアプローチが適用できるのかを考えてみましょう。正解がありすぎるということは、行き着く先であるゴールが無数にある、もしくはゴールがおぼろげであるということになるでしょう。したがって、目標設定を確実に行えるとは言い難いです。よって包括的な計画を立てることも難しいと言えます。これは、「非線形」と呼ばれる状況下でしょう。y = f(x)
が成立しません。言うなれば、 y = y1 + y2 + y3 + ... + yn
と積み重ねていくしかないのかもしれません。
この場合は、ゴールを方向性として定め、全員の矢印をそこに向けつつ、それぞれでできることをやっていくことになるでしょう。その時に団結して、結束して行えた方がいいです。分業や兼業は足枷になってしまうかもしれません。なぜならば、それによって集中が削がれ、引き継ぎなどの価値を生まない作業が増えるからです。包括的な計画が立てられない以上は、短い期間(ショートバッチ)で価値があるか、価値が上がっているかを確認していくことになります。これによって方向性に向かっているかを検査する塩梅です。少しずつわかった事実が増えてくるので、それに応じて次にやること、次のやり方、そして方向性そのものを変えていくことになるでしょう。すなわち適応させていくのです。これを怠るとどんどん方向がずれていきます。少しのズレであってもそれが致命傷ともなりえるのです。先の数式だと y = y1 + y2 + ... - yn-1 - yn
のように価値から逸れた結果はマイナスになるからです。このマイナス要素が今までの積み重ねた価値を凌駕するものだったら致命的です。このプラスからマイナスへの変化に気が付かないことがあるのです。
正解がありすぎるときには、カタを用いて、繰り返していくことが有効であることが多いです。
改善のカタ
この図は、改善のカタをもとにしたものです。先に述べたことがそのまま図になっていると思ってください。厳密には、正解がありすぎる状況下とは、① の方向性はより曖昧で不確実なものでよいものです。そして ③ はもう少しアプローチを工夫する必要がでてくるかもしれません。
浅め、深め、名前を明示するなどはマチマチですが、私の伴走支援の大半においてはこのようなアプローチで方向性を設定し、ショートバッチで取り組みを検査して適応させていく方法をとっています。最初はなかなか馴染みがなかったり、従来のアプローチと異なるため(特にマネジメント層が)戸惑うことはありますが、早いと一周目、二周目、遅くとも三周目あたりから効果を実感いただけています。
続き…
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本記事の執筆者:
長沢 智治 – アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。