はじめに

PDCA でも最初に「P」- Plan とあるように何かを遂行するときには、計画から入ることが多いでしょう。

今日の不確実性の中では、そもそも計画が正しく行えるかなんてわからないため、小さく計画して実測し、学習して次の計画に生かしていく方があっていると言われています。

しかしながら、いまだに計画、とりわけ大きな計画を立てたがるのはなぜでしょうか。

計画はコストがかからないという誤解

計画には、コストがかかっているでしょうか。計画の実行時のコストは見積もり、厳格にトラッキングするくせに、計画のコストを軽視する傾向をよく目にします。

計画にも、人的コスト、時間、資源を費やしています。それを「聖域」と言わんばかりに必要経費として扱い、無駄に大きな計画に仕立て上げることもよくあるのではないでしょうか。

とかく大きな計画は、失敗するリスクも大きくなるのですが、なぜか結果が伴わなくても問題にならないのでしょう?と思ったことがある人も多いはずです。

一つ仮説をたてるならば、大きな計画ということは実行時コストも大きいため多くの人を巻き込んでいます。おそらく、意思決定者や組織や企業のトップレベルも絡んでいるまたは、彼らの承認を得て実行することになるでしょう。多くの人が関わればそれだけしっかりと学び、失敗を次に繰り返さないようにしなければならないわけですが、どうしたことか、関わる人が多ければ多いほど、適当な結果で落とし所をつけ、「手柄」で手打ちにするなんてこともよくあるのではないでしょうか。

話を戻して、計画にかかるコスト意識を少しでも持てれば、計画も適正なサイズに収めようとすることになるのではないでしょうか。人は自分のやっていることを大きく見せたいためどうしても大きな計画のサイズになる傾向があります。小さくしたくても慣習的に大きな計画を求められることもあるでしょう。ただ、計画はコストであることを意識すれば、大振りを減らすことはできるのではないでしょうか。

計画の負債と返済

計画にコストがかかる以上、それは初期投資による負債です。何も成果がでていないのにかけたコストですから当然です。

この計画の負債を返済し、より大きな利益を得る必要があります。大きな計画でリターンが見込めなかった場合は大赤字になっているはずで、手柄なんてあるわけがありません。そこは個人を責めるとかではなく、組織の体質やフォロー体制ができていなかったことを透明化して学ばなければなりません。

負債である以上、返済計画がなければなりませんし、それは計算できる範囲であるべきです。

そう考えていくと、大きな計画自体、大きな負債を作るところからはじまるので、不確実性が高いとそのまま大きなリスクになります。

とはいえ、小さな計画だと、ハシゴを外されることがあるので怖いという意見もあるでしょう。私は大きな計画を立てたことがほとんどありません。不確実な中で負債と返済を考えているので大きな計画にならないのです。当然よくハシゴを外されます。背中から刺されます(論理的に)。それでもマーケットと企業を考えたら大きな計画は立てられません。

わかっているという過信が負債

大きな計画になりがちな理由の一つが「よく知っている」という過信と誤解であると考えます。

「このマーケットはよくわかっている」とか、「過去にうまくいった経験があるから任せて」とかは、認知バイアスでしかないと捉えた方が今の世の中ちょうどよいと考えています。世界は動いているのに、自分だけ、自分の周りだけ変わらないなんてことはないです。そう思っているならばそれは、時代に取り残されている、老害、思考停止と表現される何かになっていると考えてみるのはいかがでしょうか。

ご利用は計画的に。計画は計画的に。

計画は計画的にたてるものです。計画できないならば、計画を小さくしていきましょう。その方が負債が少ないので返済できなくても小さな損害ですみます。他から補填もできます。大きな計画の負債を返済できないとそれを見過ごす傾向があるので注意しましょう。頓挫した計画を立てたものが讃えられて、その煽りを受けたモノたちがコツコツと補填していくなんてことがなくなりますように。

返済を考えた計画のサイズ

スクラムはよく考えられたフレームワークです。一回の実施(≒ プロジェクト)が1ヶ月以内に制限されています。これをスプリントと呼び、この繰り返しで遂行していきます。1ヶ月以内は、2週間や1週間でもよく最大で1ヶ月とスクラムガイドにも記載されています。これらの期間を固定し、タイムボックスとすることで計画と実施のケイデンス(リズム)を作り出します。

1ヶ月とした場合は、計画には、8時間以内が妥当であり、スプリントの期間が短ければそれに比例して計画に費やす時間も短くします。

要するに、不確実性でブレにくい期間に、ブレにくい計画を、返済できる計画の負債で済むようにフレームワークができていると言えるでしょう。

これは計画のサイズを考えるときにとても参考になるでしょう。

本記事の執筆者:

長沢智治

長沢 智治 – アジャイルストラテジスト

サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。

DASAプロダクトマネジメント認定トレーナー
DASA DevOpsファンダメンタル認定トレーナー

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

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