本記事は、Johanna Rothmanさんの「Management Rewards: Doing Work vs Creating an Environment」の翻訳です。日本語訳に関して Johanna さんの快諾をいただいています。誤字脱字や誤訳がありましたらご指摘ください。
マネジメントの報酬
私のアジャイルトランスフォーメーションのクライアントは、大きな疑問に悩まされています。
マネージャーの報酬をどうやったら効果的にできるのか?
アジャイルトランスフォーメーションを組織が、望んでいるか、必要としているほど、現行の報酬構造は機能しなくなります。マネージャーにどうインセンティブを与えたらいいのでしょうか?マネジメント報酬に意味があるのでしょうか?
500人規模のIT組織のディレクターであるシンディは、自分自身と彼女がリードし支援するマネージャーたちのためにこのことで悩んでいます。
彼女の人事部門と彼女のマネージャーである CIO は、彼女の仕事を計測したいと考えています。彼らは、やっている仕事を計測することはできます。彼女の部門がどれだけのプロジェクトがあり、どれだけのリリースをしているかを知ることができます。あるいは、彼女の部門がどれだけの目標を達成したのかを知ることができます。
これらの目標は、OKR と呼ばれています。OKR は MBO に似ているように見えます。
また、人事部門やシンディの上司がサイクルタイムやリードタイムを計測するときに、彼らが見ているのは、彼女の部門がどれだけサイクルタイムやリードタイムを短縮できたのか、という1つの側面だけになります。
これはミクロレベルでは有用です。「意思決定の時間を最小限に抑える理由」で書いたように、サイクルタイムやリードタイムが長い方がはるかに重要かもしれません。
シンディは、このアジャイルトランスフォーメーションを成功させていと考えています。彼女は、組織が実験を増やせばもっとうまくいくと考えています。
彼女が気がついた重要なアイデア:
- シンディは、すべての仕事を成し遂げることで組織が顧客を満足させられるため、同僚のディレクターたちと協力しなければならない。
- すべてのチームを支援するというシンディの仕事の効果を測るには、四半期よりも長い時間がかかることがよくある。言い換えると、彼女の仕事は計測サイクルよりも長い時間がかかる。
シンディは、四半期ごとのインセンティブと報酬をどうやって彼女の計測値を整合させることができるのかよくわかっていません。KPI が、彼女が組織にもたらす価値と一致していないのです。
シンディは、コラボレーション環境にてチームを支援しています。
仕事ができる環境づくりでチームを支援
シンディは、チームに対して仕事ができる環境づくりで支援をしています。
シンディの上司や人事担当者は、シンディの組織は上図のようになっていて、シンディが中心にいて、やることを指揮しているように見えると考えています。
あなたの組織も、このような類の組織図として図示することができます。
シンディと彼女の部門の仕事の仕方は、これとは異なります。上図のような図に対して、シンディたちは、下図のような小さな世界のネットワークのように機能しています。
チーム間、個人間は、お互いに一見するとランダムな繋がりを持っています。繋がりは、もっと強い人もいれば、そうでない人もいます。
シンディは、このような繋がりを促進するための環境をつくることが自分の仕事だと考えています。シンディは、チームのためのガイドラインや制約もつくらなければなりません。
彼女のつくった主なガイドラインと制約:
- 実施したことは監査可能であることを確認すること(シンディは規制産業で活動している)
- (毎日できることを目指して)最低でも週1回は、仕事の成果を内部で見せ合うこと。回数が多いほど、誰もが早く実験して学べるようになる。
- 自分の仕事が、IT部門と自分のプロダクトの上位目的に対応しているかを確認し続けること
シンディは、チームがどのように仕事をするべきかについてのガイドラインをつくっていないことに注意してください。彼女は、チーム、プロダクト、組織のためになる彼女が求める成果(アウトカム)について話をしています。チームは自分たちで意思決定を下します。チームは、自分たちの仕事に責務を持っています。チームは自ら問題を解決します。解決できないときは、彼女にアドバイスを求めます。
シンディは、半年前からこの方法で組織を運営し始めました。チームは、標準プロセスではなく、成果(アウトカム)とコラボレーションに焦点を当てることの効果を示し始めました。
シンディの報酬は危機に瀕しています。チームのせいではなく、マネージャーたちが協力していないからです。
アジャイルトランスフォーメーションではマネジメントコラボレーションが重要
マネージャーたちがコラボレーションすることで、より優れた包括的なゴールを実現するときに、組織は成功することができます。マネージャーたちが具体的な成果物に集中するとき、組織は、成功するかもしれませんし、しないかもしれません。さらに悪いことに、これらの成果物が組織にとって有用なのかどうかは、組織はわかっていません。
組織が、マネージャーのやっていることで測定するとき、組織は、とても低いレベルの成果(アウトカム)になることを強めてしまいます。組織がマネージャーの環境づくりを評価するとき、誰もが成功する可能性が高くなります。
「測定」と「評価」という2つの異なる言葉を用いたことに注目してください。私は、マネージャーへの報酬に対する直接的な測定方法を知りません。私は、間接的な測定方法しか知りません。
私が最初に用いる測定方法は、「マネジメントのコラボレーション」です。その理由は、「意思決定の時間を最小限に抑える理由」に書きました。
マネージャーたちが組織の目的である包括的なゴールに向かって協働すればするほど、組織が望む成果(アウトカム)が見えてくる可能性が高くなります。
マネージャーたちのやっていることに対して報酬を与える必要はありません。その代わりに、メンバーが仕事をすることに対してファシリテートする環境をつくったことに対してマネージャーたちに報酬を与えましょう。それはとても難しく、そしてとても価値があることです。
アジャイルトランスフォーメーションを望むならば、マネージャーたちと彼らのインセンティブから始めていきましょう。マネージャーたちに、協働することと組織全体でコラボレーションが可能になるようにお願いしていますか?そうでないならば、何をする必要があるでしょうか?
私は、「Modern Management Made Easy」の最終的な校正と編集に取り組んでいるところです。
本記事の翻訳者:
長沢 智治 – アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。