翻訳記事

この記事は、Magdalena Firlit さんの「How to start with Evidence-Based Management?」を翻訳したものです。翻訳は Magdalena さんの許諾をいただいています。誤訳、誤字脱字がありましたら、ご指摘ください。

はじめに

私の経験と観察による懸念事項としては、EBM(Evidence-Based Management:エビデンスベースドマネジメント)フレームワークが経験的であるという理解が弱い点にあります。EBM では、透明性と、頻繁な検査と適応が必要となります。よくある組織では、最初の評価を行ったあとに、そのアイデアを捨て去ってしまうことがあります。一度だけ計測をしているのでは、何らかの判断をするには、十分ではありません!これがうまくいくという保証はないのです。

訳註: 「エビデンスベースドマネジメントガイド」を日本語翻訳して Scrum.org に提供しました。こちらからダウンロードできます。

意味のあるゴールに向かって頻繁に、定期的に計測して、判断して、適応します。これが、EBM のパワフルなフレームワークの隠し味なのです。スクラムと同様に、EBM も理解するのは容易ですが、習得するのは困難です。一度経験してから組織に導入すれば、大きな成果を得られるはずです。

繰り返しになりますが、EBM を組織に適用するには、透明性、検査と適応が必要となります。それと信頼です。私が顧客にコンサルティングや教育をするときには、必ず次の質問をします:

何を計測していますか?

「それほどでもありません。主に、時間とベロシティですね」という回答をよく耳にします。あなたの回答は何ですか?

あなたの答えは…

その次の質問:

(あなたの顧客や組織に対する)価値を提供していることをどのように知ることができていますか?

繰り返しになりますが、この質問も読んでいただいているあなたへの質問でもあります。あなたはの回答は何ですか?

あなたの答えは…

彼らは、知らないのか、もしくは、部分的には知っていると思っています。組織の中には、アウトカム(成果)ではなく、アウトプットに注目することがあります。これは、デリバリーの指標に関心があることを意味しています。もちろん、かなりに数になります。アウトプットだけに注意を払うと、短期的な結果(例: 効果性)につながることになります。

  • アウトカム: 顧客やユーザーの(行動の)変容を示す指標
    例: 顧客満足度
  • アウトプット: 生み出されたものを反映する指標
    例: ベロシティ、スループット

つまり、わたしたちは、優れた数のアウトプットを提供できるかもしれません。チームの効果性を高めることで、より多くの機能、より高いベロシティなどを実現することもできますが、価値を提供したかどうかを評価することはできていません。この過程のどこに顧客が含まれているのでしょうか?どのような顧客の行動変容につながったでしょうか?顧客は、わたしたちのプロダクトに満足しているのでしょうか?

組織がアウトカムよりもアウトプットに重点を置いていると感じたら、それを変えるべき時がきているということです。すべての活動や、アウトプット、顧客へのアウトカムが、あなたの会社のインパクトを決定するということです。

EBM フレームワークの導入手順(顧客組織への導入の経験に基づく)

  1. EBMガイドを確認し、4つの重要価値領域とそこに記載されている手本となる指標を検討する
  2. 自分たちのゴールを理解しているかどうかを確認する
    なぜ計測をしようとしているのか?達成したいことはなにか?ゴールは誰にでも見えるようにする。
  3. 指標は、自分たちが持っているもの、持つことが可能なものから始めてみる。
    指標の大半は、社内でアクセスできるものであり、各部門に散らばっているから。組織内を見渡し、どこで入手できるかを探してみる。それは営業部門やマーケティング部門かもしれない。
  4. 4つの重要価値領域すべてから価値のある指標を組織に取り入れる
    これらの指標について、ステークホルダーと議論したり、ワークショップを開催したり、クリエイティブセッションを実施したりする
  5. 現在、自分たちがどこにいるのかを計測する
    エビデンスを持っているはずである。これらは事実である。
  6. このエビデンスに基づいた意思決定を行う
    何を改善する必要があるのか?それはいつまでに?
  7. 医療と同様に、多くの「治験」を行わない
    何が役に立ったか、何が役に立たなかったかをわかることはないので。
  8. 頻繁に検査する
    継続的かつ頻繁に計測する。たまに計測値を確認するのは推奨できない。
  9. それに応じて適応し、必要に応じて「治験」を変更する
    「治験」を変更するとは、指標を改善するために行った行動を変更するということ。取り組みが有望でない場合は、それを変更する。実験し、結果から学ぶ。繰り返す。
  10. EBM を透明化し、チームや組織全体が理解できるようにする
  11. 可視化することで、より良い判断ができるようになる
    これは有効である(例: スコアボード)。
  12. 熟練した偏見のないリーダーシップを検討することも重要である
  13. 最後に重要なのは、常に経験主義の観点から考えること
    既存のプロセスや習慣に惑わされない。

忘れてはならないのは、これは指標駆動ではないということです。EBM フレームワークは、達成したいゴールに向かって事実に基づいて判断するのに役に立つということです。

この記事は、Patricia Kong さんと Mark Noneman さんにレビューとフィードバックを頂きました。

この記事の初期投稿は、こちら です。

本記事の翻訳者:

長沢智治

長沢 智治 – アジャイルストラテジスト

  • サーバントワークス株式会社 代表取締役
  • Agile Kata Pro 認定トレーナー
  • DASA 認定トレーナー

認定トレーナー

DASAプロダクトマネジメント認定トレーナー
DASA DevOpsファンダメンタル認定トレーナー

認定試験合格

Professional Scrum with User Experience
PAL-EBM
Professional Scrum with Kanban
Professional Scrum Product Backlog Management Skills
Professional Scrum Facilitation Skills
Professional Product Discovery and Validation
Agile Kata Foundation
DASA Product Management
DASA DevOps Fundamentals

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

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