翻訳記事

この記事は、Mark Wavleさんの「The Change Hypothesis: A Simple Template for Leaders」を翻訳したものです。翻訳はMarkさんの許諾をいただいています。誤訳、誤字脱字がありましたら、ご指摘ください。

「変革」、それは奮い立たせる言葉でもあれば、恐怖を思い起こさせる言葉でもあります。リーダーとして変革に導くには、絶妙なバランスが求められます。皆さんが、スクラムマスターであれ、プロダクトオーナーであれ、開発者であれ、マネージャーであれ、皆さんが求める改善への情熱が必要となると同時に、新しい情報や視点への適応力も必要となります。

変革への仮説は、皆さんにとって秘密兵器となるのです!

シンプルな仮説テンプレート

こちらのシンプルなテンプレートを用いて検証可能な仮説を立てると、変革を分析し、明確に表現し、望ましいアウトカム(成果)に導くことために役立てることができます。

私たちは、【❶現状の問題点】を回避して、
【❷この望ましい将来の状態】に到達すると考えています。
そのために、【❸いくつかの行動】をとります。
【❹いくつかの指標】を評価することによって、上記が実現しているかどうかを観察していきます。

We believe that, by [❸ taking these actions],
we will [❷ achieve this desired future state]
and avoid [❶ the current status quo pain points].
We'll observe if that's happening by [❹ reviewing these measures].

以下は、変革が上手くいくためのロードマップのガイドになります。

❶ 現状の問題点

本来、変革とは現状を破壊するものです。私たちは習慣の中で暮らしており、快適なゾーン(コンフォートゾーン)の外に出ると不安になることがあります。この不安を無視すると抵抗の元になるのです。

その代わりとして、まずは現状の問題点、つまりペインポイント(痛点)を認識していきましょう。

ストーリーテリングを用いて、何もしないことによりマイナスの結末を描いてみましょう。それは、特定のプロセスが顧客の不満に繋がっているとか、非効率が生産性を妨げているとかだったりするでしょう。データを使って影響を定量化し、緊急性を否定できないように明確にしていきましょう。

❷ 望ましい将来の状態

❶により変革の背後にある「理由(why)」を明確にしたら、次は「どこに行くのか(where)」を共有しましょう。将来の状態について、明確で意欲的なビジョンを描くのです。変革を実施した後に物事がどのようになっているでしょうか?それが組織や関係者にとってどのような恩恵をもたらすのでしょうか?

ここでもストーリーテリングが効果的です。人々が期待できる改善点を具体的に説明するのです。何が変わるのかを伝えるだけでなく、それを見せるようにします。しかし、ビジョンだけでは十分でないことを忘れないでください。進行状況を追跡し、変革が上手くいっていることを示すデータ駆動な指標で、このストーリーを補完していくのです。

❸ 行動をとる

人々は明確な道筋を求めるものなので、「このことでの私の役目は何ですか?」に対して答えられるようにします。

皆さんのやるべきこととは、人々が理解して行動するのに十分なほど具体的な選択肢を提示することです。それと同時に、変革の一翼を担うというオーナーシップ(当事者意識)が持てるくらいにオープンであることです。いくつかの具体的な行動の例を提示して、その変革を支える幅広い種類の行動が取れるように境界線を示せるようないくつかのパラメーターも組み合わせてみてください。これによって、オーナーシップ(当事者意識)が芽生え、最初の成果が出せることで勢いが増していくのです。

❹ 指標を評価する

指標とは、等しく同じように作られるわけではありません。変革の取り組みの進行状況を追跡するための指標を選択するには、アクティビティだけに焦点を当てたいといった衝動を抑えてください。例えば、「メンバーは研修に参加したか?」といったアクティビティの指標は、重要ではありますが、これが必ずしも新しいスキルを身につけて、実践しているかを示すものではありません。

その代わりに、アウトカム(成果)に基づいた指標に焦点を当てましょう。変革の影響が反映される定量化が可能な指標を探してみましょう。例えば、顧客満足度の向上がゴールであれば、変革の実施後に顧客満足度のスコアがどう変化したかを追跡すればいいのです。

アウトカム(成果)に基づいた指標を特定することで、関係者全員が変革の取り組みの効果について貴重なインサイトを得ることができます。これによって、最終的に望ましいアウトカム(成果)の達成につながる軌道修正と議論が促されるのです。

仮説を受け入れる

変革は実験だと考えるべきです。人間の振る舞いを伴う変化は複雑です。したがって、行動とアウトカム(成果)の関連性を確かなものにすることはできません。仮説の謙虚さと好奇心が、不確実性の中で思い切って推進するのに役立つのです。

変革の仮説の素晴らしいところは、その適応性にあります。フィードバックを収集したり、課題に直面したりしたら、仮説を見直すようにします。学んだことに基づいて、行動を洗練させ、ビジョンを調整するのです。この反復的なプローチは、常に線形でない道筋においても、変革のプロセスを前進させることができます。

変革の推進は、チカラずくでするものではありません。ビジョンを共有し、明確な道筋を示し、共に歩みながら柔軟になることなのです。このシンプルなテンプレートによって、変革を通してチームを導き、長く上手くいく可能性を高めていく機会を増やしていきましょう。

そして、これが皆さんを変革の停滞感から解き放つ方法なのです。

本記事の翻訳者:

長沢智治

長沢 智治 - アジャイルストラテジスト

サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。

PSPO II - Professional Scrum Product Owner II
PSPO I - Professional Scrum Product Owner I
PSM II - Professional Scrum Master II
PSM I - Professional Scrum Master I
PSD I - Professional Scrum Developer I
PAL-EBM - Professional Agile Leadership - Evidence-Based Management
PAL I - Professional Agile Leadership I
SPS- Scaled Professional Scrum
PSU I - Professional Scrum with User Experience
PSK I - Professional Scrum with Kanban I
PSF - Professional Scrum Facilitation Skills
PSPBM - Professional Scrum Product Backlog Management Skills
認定スクラムマスター
DASA Accredited DevOps Trainer
DASAアンバサダー

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

プロフィール