本記事は、「A Scrum Master Works on Three Levels」の翻訳です。翻訳については、著者の Magdalena Firlit さんより快諾いただきました。
誤字脱字や誤訳があった場合はぜひご指摘ください。
はじめに
顧客にサービスを提供したり、スクラムチームと共に取り組んだり、Professional Scrum のトレーニングを実施したりした経験から、スクラムマスターの中には、開発チームとプロダクトオーナー (PO) のためだけに支援をしている人がいることをみてきました。
スクラムガイドによると、スクラムマスターは、3つの層に対して支援をします:
- プロダクトオーナー
- 開発チーム
- 組織
スクラム フレームワークを採用している(または採用している途中の)いくつかの組織を観察していると、いくつかの事実が浮かび上がってきました。
スクラムマスターの支援範囲の実態
1. スクラムマスターの多くが、開発チームの支援のみに注力
![スクラムマスターの多くが、開発チームの支援のみに注力 スクラムマスターの多くが、開発チームの支援のみに注力](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2020/08/3-e1568781532194.png)
2. スクラムマスターの多くが、開発チームとプロダクトオーナーの支援のみに注力
![スクラムマスターの多くが、開発チームとプロダクトオーナーの支援のみに注力 スクラムマスターの多くが、開発チームとプロダクトオーナーの支援のみに注力](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2020/08/2-e1568781783670.png)
3. スクラムマスターが、組織、開発チーム、プロダクトオーナーの支援を注力することはめずらしい
![スクラムマスターが、組織、開発チーム、プロダクトオーナーの支援を注力することはめずらしい スクラムマスターが、組織、開発チーム、プロダクトオーナーの支援を注力することはめずらしい](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2020/08/3levels-e1568781996760.png)
これらの事実から、なせこのようなことが起こるのか、どうすれば変えられるのかと考えさせられました。
アジャイルコーチ
現在、多くの組織がアジャイルコーチ(または、似たような肩書き)を採用しています。それは、組織レベルで仕事をする人を採用する必要性を認識しているからです。通常、アジャイルコーチに期待をするのは、以下です。
- 社内の人材育成
- リーダーシップとの連携
- アジリティへの移行支援
- 組織的な変革
- 他部門(人事、マーケティング、営業、法務など)との連携
- その他
(訳注: 【PR】弊社が実施しているサービスがまさにこれです)
スクラムマスターと組織の実態
誠実に行われていますが、疑問を持ちます。それは、なぜ組織はスクラムマスターにこのような組織的な課題について任せないのでしょうか?
スクラムマスターの役割は誤解されることが少なくありません。秘書、チームの進捗状況の観測者、タスクを割り当てる人、計測マネージャーなどなど、諸説言われる役割ですが、スクラムチームにのみ注力していることが多いです。
組織は、スクラムマスターの役割を深く理解していることはほとんどないので、組織レベルで価値があるとは考えていません。
結果は見えています。職務外の仕事で評価を下げたくないので、スクラムマスターが組織全体に対して仕事をすることに恐れるようになります。組織がスクラムマスターに期待しているのは、開発チームとのみ連携して生産性をあげることや、プロダクトオーナーとのみ連携し、組織とのコミュニケーションを少なくすることです。
例えば、私が何度かみてきたシナリオとしては、問題をより深く理解するのに役立つかもしれません。
ある組織では、いくつかのスクラムマスターがプラクティスコミュニティを作り、月に数時間を使っていたので、不満を持っています。次に、彼らは他部門といくつかのミーティングを企画し、そこで、アジリティについて議論しています。リーダーシップチームの懸念は、チームの生産性や「不必要」だったり、「重複した」仕事をすることですが、それが会話に現れます。スクラムマスターは、許可されない/推奨されない/支援してもらえないなどの理由で、スクラムを組織に広めることを止めてしまいます。
スクラムマスターが3つの層にすべてに対して支援することがほとんどないもう一つの理由があります。スクラムマスターの中には、自分の役割がどの説明責任を持っているのかを認識していない人がいることです。このポジションに就いたばかりで、まだ学んでいる最中ということもあるでしょう。スクラムチームに注力したいだけだったり、組織の人は自分の話に耳を傾けてはくれないと思うかもしれません。他にも理由があるかもしれません。
スクラムマスターは、階層構造を持った組織で採用されることが多いです。組織の中でのスクラムマスターの地位は、文化やプロセス、階層そのものによって、聞いてもらえないくらいに低い場合もあります。
これらの観察は、課題を解決するものではありません。スクラムマスターと組織の関係を見過ごしてしまう理由は他にもたくさんあるでしょう。
スクラムマスターとして、この状況を感じていたら、包括的にに行動しましょう。自分の役割を組織に見える形にして、組織に望まれるようにしましょう。組織がアジリティとプロフェッショナルなスクラムを推進するときに助けられるのは、あなただけです。
アドバイス
- 組織にスクラムとスクラムマスターを教えましょう
スクラムのフレームワークとはどういうものか、スクラムマスターの責務は何か(組織と共に連携する役割であることも)を説明しましょう - 組織のチェンジエージェントになりましょう
小さな改善を行い、その結果を発表し、それらを公開することで透明性を高めていきましょう。 - 組織的な妨害要因を取り除くか、その手助けをしましょう
- 他のスクラムマスターを支援しましょう
他のスクラムマスターも組織レベルに支援できるようになるように手助けしましょう - 組織に実証的なアプローチとその恩恵を教えましょう
- 組織にスプリントごとの価値と完成したインクリメントについて教えましょう
特にプロダクトオーナーに理解してもらいましょう - 組織でのビジネスアジリティについての会話を始めましょう
- アジャイルメトリクスを組織に導入しましょう
エビデンスベースドマネジメントを参照してください - 組織の改善点とその進捗を提示しましょう
- マネジメントにアジャイルリーダーシップを教えましょう
そして彼らを巻き込みましょう - 他のチームにスクラムを紹介しましょう
- リーダーシップと協力して、妨害要因をうまく取り除きましょう
- スクラムの価値観を体現し、組織全体にスクラムの価値観を教えましょう
- 組織を全体的な仕組みとして扱い、ニーズに耳を傾けましょう
では、あなたの現在の役割を見直してみましょう。スクラムマスターとして、3つの層のすべてを支援していますか?
![スクラムマスター スクラムマスター](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2020/08/3levels-e1568781996760.png)
本記事の翻訳者:
![PSPO II - Professional Scrum Product Owner II](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/pspoii.png)
![PSPO I - Professional Scrum Product Owner I](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/pspoi.png)
![PSM II - Professional Scrum Master II](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/psmii.png)
![PSM I - Professional Scrum Master I](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/psmi.png)
![PSD I - Professional Scrum Developer I](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/psdi.png)
![PAL-EBM - Professional Agile Leadership - Evidence-Based Management](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/pal-ebm.png)
![PAL I - Professional Agile Leadership I](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/pali.png)
![SPS- Scaled Professional Scrum](https://www.servantworks.co.jp/wp-content/uploads/2021/08/sps.png)
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『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。