翻訳記事

本記事は、Johanna さんの「Pros and Cons of OKRs」の翻訳です。翻訳にあたって、著者の Johanna Rothman さんよりご快諾いただいております。誤字脱字・誤訳がありましたら、ご指摘ください。

はじめに

OKR は優れた目標を設定し、それらの目標を達成するために役立つものとして、いくつかの組織で採用されています。OKR とは、目標 (Objectives) と 成果指標 (Key Results) のことです。

このアイデアは、四半期ごとに会社の目的を用いて、大胆な目標を設定するというものです。それぞれの目標には、3〜5つの成果指標がり、どれだけの成果があったかを測定することができます。

四半期ごとにすべての目標を達成できるわけではありません。とても大胆なゴール設定なのです。

しかしながら、私は、ほとんどのクライアントに OKR を勧めるのをやめてしまいました。それは、クライアントが、組織的な目的を持ち合わせていなかったからです。優れたゴールではなく、成果指標がボトムアップで発生し、上部に流れていきます。でもこれは誤りです。以前に、OKRs as MBOs という記事を書いたので参考にしてください。

OKR

OKR の良さ

OKR がどのように組織を手助けしてくれるのかについて、もう少し話しましょう。

マネジメントチームとして、プロジェクトポートフォリオの決定に悩んでいる場合、OKR が手助けになるかもしれません。以下で、どう役に立つのかを紹介します:

大胆でインスピレーションに満ちた会社の目標を1つ設定しましょう。事業部単位で組織化している場合は、事業部の目標も設定しましょう。

たとえば以下のように設定します:

新製品 X を、その分野のプレミア製品として確立する

3〜5 つの成果指標を設定します:

  1. 次の四半期に製品 X がその分野をリードしていることを証明するためのベンチマークを設定して公開する。
    製品開発チームとマーケティングチームがプログラムとして協働するか、チームを作って取り組むことになります。
  2. 次の四半期にトレードショー(展示会)で製品 X を出展する。
    製品開発、マーケティング、営業、サポートなどが協働することになります。
  3. 次の四半期に顧客事例を3つを獲得する。他の製品にないやり方で顧客のために機能していることを示す事例にします。

これらを1四半期で達成することは可能でしょうか?

可能かもしれません。目的が大きく、大胆なゴールであるという考え方です。

3つの成果指標を全て達成できるでしょうか?それは、関係メンバーが協働して施策を進めてこそです。

プロジェクトポートフォリオの決定に悩んでいる場合は、OKR を用いてもいいでしょう。これは大きな利点です: 大きく大胆な目標に全員が合わせるためには、OKR によりプロジェクトポートフォリオを決めるのを手助けしてくれます。

OKR を用いることでできること:

  • いくつかの限定した目標に対して全員を合わせることができる
  • 成果(アウトカム)を測定する
  • 組織の仕掛かり作業(WIP)を目標だけに制限する
  • すべては、目標から流れ落ちるようになる
  • 関係メンバーが協働して目標を達成する

多くの良いことがあります。

しかしながら、私は、組織の中でこれを目にすることがあまりありません。

OKR の悪さ(罠)

しかし、私のクライアントがプロジェクトポートフォリオと OKR で悩みを抱えている理由のほとんどは、以下の理由に集約されています:

  • 組織の目的が一つではない。株主に価値を還元することや、お金を稼ぐことが仕事だと思っている人もいます。価値の還元もお金を稼ぐことも、目的を果たした成果(アウトカム)です。
  • 事業部がまとまった製品を持っていない。
  • メンバー、チーム、マネージャーを個人ごとに測定したい人もいる。目標と施策を組織に落としていきたいと思っている。

一つずつ取り上げていきます:

すべての組織には、目的が必要です(「Innovation Principles」を見てください)。第一の原則は、「目的を明確にする」ことです。目的を明確にできなければ、協働する目標を設定することはできません。

私は、多くの関係がない製品を抱えている事業部を見てきました。それぞれの製品はその製品のためだけに出ています。こういった事業部が目標を明確にしようとすると、全体の目標がないため、失敗します。

人事(HR)や業務管理システムにて OKR を実施させると、仕組みではなく、人を測ることになります。私はこの過程をあまりにも多く見てきました:

  • 誰かが、組織にある「終わらせるべき」4,500 のプロジェクトを決定する(ただし、目標はなし)
  • それらのプロジェクトは、一人一人に落とさせていく。
  • 各人には、KPI (Key Performance Indicators) と呼ばれる指標があり、業務管理システムで各人は測定される。

OKR の要点はそこではありません。

だから私は、一番最初にこの質問をします:

なぜ事業をしているのですか?世界でどんな違いを出したいのですか?

全員がこの問いに対する答えに対して同意した時に、目的を持ったと言えます。このとき、OKR も必要ないのかもしれません。

OKR を集中する道具として活用

OKR を採用するなら、集中する道具として用いましょう。1つの目標を設定することを推奨します。もし、とても大きな組織であるならば、3つ程度の目標を設定しましょう。もし3つ以上の目標が必要と思ったら、それらは大胆なゴールになっていないのではと疑ってみます。

それぞれの目標に対して、3〜5つの成果指標を導出してみてください。

そして、成果指標を達成するために組織全体で協働する必要があることを確認してください。これができれば、 OKR が役に立つでしょう。

私は、プロジェクトポートフォリオの決定推進するための目的を重要視しています。そうすれば、KTLO, Grow, Transform のプロジェクトの数を評価することができます(「 Projects, Products, and the Project Portfolio: Part 2, Assess & Rank the Work」か「 Manage Your Project Portfolio」でより詳しく解説しています)・

OKR が役に立ちそうだと思った方は、罠に陥らないようにする別の方法をご存知の方は私も勉強になるので、コメントしていただければ幸いです(訳注: コメントは元の記事に英語でコメントしてください。日本語の場合は、この記事のリンクをつけて Twitter などにコメントしていただくと日本語で議論が進むと思います)。

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2018年1月に関連する OKR の記事を執筆しておりました。「OKR による相乗効果」こちらも合わせてご覧いただければ幸いです。OKR の実践者として、OKR の設定についてのご支援も承っております。【お問い合わせ】

本記事の翻訳者:

長沢智治

長沢 智治 – アジャイルストラテジスト

サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。

DASAプロダクトマネジメント認定トレーナー
DASA DevOpsファンダメンタル認定トレーナー

『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。

Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。

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