この記事は、Nichervan Fazelさんの「Nurturing Scrum Values: Coaching Techniques for New Scrum Teams」を翻訳したものです。翻訳はNichervanさんの許諾をいただいています。誤訳、誤字脱字がありましたら、ご指摘ください。
はじめに
スクラムフレームワークを採用するということは、単にフレームワークをマスターすることに留まらない。チームのマインドセット、振る舞い、アウトカムを形づくる一連の中核となる価値基準を培うということだ。新たなスクラムチームがアジャイルの道のりに出る際、彼らに対してスクラムの価値基準をコーチングすることは、協働的で、適応性があり、高いパフォーマンスを発揮できる環境を醸成するための最も重要なことだ。この記事では、新たなチームに対してスクラムの価値基準を浸透させ、強化するための効果的なコーチングテクニックについて掘り下げていくことにする。
スクラムの価値基準を理解する
スクラムの価値基準は以下であり、スクラムチームが機能する土台となるものだ。
- 公開
- 勇気
- 確約
- 集中
- 尊敬
これらの価値基準は、相互作用、意思決定、作業プロセスの指針となり、チームが結束して活動し、目標を成し遂げることを確実にするものだ。新たなスクラムチームに対して、これらの価値基準をコーチングするには、その意義を説明するだけでなく、日々の行動にどのように反映させるかを示していく必要がある。
訳註: スクラムの価値基準については、ホワイトペーパーを日本語で読むことができる。
スクラムの価値基準を強化するコーチングテクニック
- 規範を示す
コーチとして、スクラムの価値基準を行動や対話の中で体現する。チームメンバーの話を傾聴することで「公開」を示し、透明性を持って取り組むことで「勇気」を示し、多様な視点に「尊敬」の念を表す。 - ストーリーテリング
スクラムの価値基準を取り入れることで、よいアウトカムにつながった実例を共有する。ナラティブ(ストーリーテリング)は、チームメンバーがさまざまなシナリオにおける価値基準を実践的に適用するイメージに役に立つ。 - 価値基準のふりかえりセッション
スクラムチームのスプリントレトロスペクティブにて、価値基準にフォーカスした定期的なふりかえりセッションを組み込む。価値基準が守られたり、妥協してしまったり、あるいは改善された事例について話し合う。これにより自己認識と継続的改善を促せる。 - ロールプレイ演習
価値基準が試されるような状況をシミュレーションする。ロールプレイングを通じて、チームメンバーはスクラムの価値基準に沿った対応を練習し、問題解決のスキルを身につけられるようにする。 - 価値基準に特化したワークショップ
それぞれの価値基準に特化したワークショップを開催する。これらの価値基準がチーム編成、意思決定、プロジェクトのアウトカムにとってどのような影響を与えるのかを協力して探究する。 - フィードバックループの強化
チーム内で率直で建設的なフィードバックを奨励する。チームメンバーが「公開」の価値基準を実際に体験することで、自らも「公開」を適用できるようになる。 - コーチングサークル
ピアツーピアのコーチングサークルをファシリテートし、チームメンバーがスクラムの価値基準をどのようにチームの仕事に統合したかを話し合い、互いに提案し合う。 - ゴール設定と確約
スクラムの価値基準に沿った現実的なゴールを設定するようチームをガイドする。これらのゴールを達成するために「確約」し、「集中」し続けることの重要性を強調する。 - 価値基準の統合度合いのフィードバック
チームがスクラムの価値基準をどれだけ体現できているかを定期的にフィードバックするようにする。進捗を確認し、改善のためのガイダンスを示す。 - チームにとっての利点
チームがスクラムの価値基準に従うことを手助けする際、スクラムの価値基準がチームメンバーの個人的な手助けとなる点において、何が彼らをやる気にさせるのかを理解し、それを用いて彼らを助けるようにする。
まとめ
新たなスクラムチームにスクラムの価値基準についてコーチングということは、忍耐、献身、適応性が求められる道のりでもある。価値基準に基づく振る舞いを奨励する環境を作ることで、プロダクトを提供することに秀でるだけではなく、コラボレーション、イノベーション、個人の成長においても発展するチームへの道を開くことができるだろう。スクラムの価値基準がチームのDNAに刻み込まれると、アジャイル原則の真の理解者になるような羅針盤となる。
本記事の翻訳者:
長沢 智治 – アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。