この記事は、Magdalena Firlit さんの「Business Value in Agile Organizations」を翻訳したものです。翻訳は Magdalena さんの許諾をいただいています。誤訳、誤字脱字がありましたら、ご指摘ください。
はじめに
ビジネス価値とは何か
おそらく、「ビジネス価値」の定義は一つではありません。その概念は状況によって異なるかもしれません。しかしながら、組織にとっての恩恵と捉えることができます。いくつかの例を挙げてみましょう。
- 収益
- コスト削減
- コスト回避
- 株主の価値
- 市場シェア
- ムダと削減
- プロセスの運用効果性の向上
- ブランドのイメージと評判
- 従業員のエンゲージメント
- 社会的な責任
- 顧客の価値
- イノベーション
- 市場に出すまでの時間(T2M)
- (その他、多数)
プロダクトオーナーへのヒント:
みなさんの文脈におけるビジネス価値を定義してみてください
プロダクトオーナーが忘れてはならない収益とコスト削減
プロダクトオーナーは、収益を上げることと、コストを抑えることを忘れてるべきではありません。組織のために価値を提供するには、ビジネス価値と顧客価値のバランスをとることが求められます。収益を上げることは極めて重要ですが、組織は顧客のアウトカムにも配慮する必要があるのです。
多くの企業で、ほとんどのプロダクトオーナーが、自分たちのプロダクトが収益を伸ばしているかどうか気にしていないことを観察してきました。さらに、彼らは自分たちのプロダクトのコストも把握していないこともあります。最も心配な点は、プロダクトへの投資が追跡されず、組織がそれに関する不都合な事実をすべて葬り去ってしまうことなのです。このようなケースはよく見かけます。これは倫理の観点からの問いかけでもあります。
第一のルール: お金を絶対に損しないこと
ウォーレン・バフェット
第二のルール: 第一のルールを絶対に忘れないこと
プロダクトオーナーがプロダクトの収益やコストについてほんど知らない理由はいくつかあります。例えば、権限を与えられていないプロダクトオーナーやプロジェクト指向な組織などです。この記事は、これらについて述べているわけではありません。プロダクトオーナーへの権限移譲についてはこちらの記事をご覧ください。
プロダクトオーナーやプロダクトマネージャーであれば、自らのプロダクトが不必要に資金を失っている可能性がどれくらいかを考えてみてください。
経験主義とエビデンスベースドマネジメント(EBM)は、より良いプロダクトの意思決定に役に立つかもしれません。
エビデンスベースドマネジメントガイドは、日本語にも翻訳されています
プロダクトオーナーへのもう一つの質問としては、「ビジネス戦略を持ち合わせていますか」があります。プロダクトのビジネス戦略において、収益の流れ、コスト構造、顧客のアーキタイプを含む、プロダクトの全体像を示すことができているでしょうか。
ビジネス価値とビジネスアジリティ
ビジネス価値は、市場の変化、顧客、ビジネストレンドに基づいて迅速にビジネス上の意思決定を行い、必要に応じてピボットを行う組織の能力と強く関連しています。
ビジネスアジリティとは、プロダクトオーナーが必然的な変化に備えることを意味しています。ビジネス戦略やプロダクトビジョンは変化が起きた時点で発展する可能性があるのです。
ビジネスアジリティでは、上記の能力だけでなく、組織文化や他の領域にも関連しています。そのためこのトピックはより慎重にする必要がありますし、別の記事でも触れていく必要があります。
ビジネス価値と顧客価値
顧客に提供する価値が非常に高ければ高いほど、それをビジネス価値に反映させるべきであるということを改めて強調しておくべきことでしょう。
収益に関連しているだけのプロダクトゴールを持つことは、良い考えではないことが多いです。一方、収益や企業の経営状況を軽視してしまうと、プロダクトの収益性が悪化する結果になりかねません。
このトピックについては、いくつかの記事で取り上げました。
最終的なアドバイス
- 透明であれ
- 経験主義を用いよ
- プロダクトの判断に役立つデータを持て
- ビジネス価値を計測せよ
- プロダクトのコストを気にかけよ
- ムダを省け
不必要な手続き、不必要なプロセス、誰も望んでいない機能の提供など - 顧客価値とビジネス価値を両立せよ
- チームの創造性とイノベーションを強化せよ
- プロダクトのビジネス戦略を持て
- 現在の市場動向を把握し、反応せよ
- 必要なときに迅速に変化する力を注意を払え
終わりに
顧客価値は非常に重要ですが、プロダクトオーナーはビジネス面も忘れてはいけません。計測可能な指標とデータを持ち合わせましょう。プロダクトを顧客にとって価値のあるものにして、組織にとって利益をもたらすものにしていきましょう。
この記事はAIではなく、人間であるMagdalena Firlitが執筆しました
ビジネス価値は、Magdalenaさんの研修コースで、議論と実践がされています。特に、「Professional Scrum Product Owner Advanced」と「Professional Agile Leadership – Evidence-Based Management」です。Magdalenaさんの研修コースはこちらをご覧ください。
本記事の翻訳者:
長沢 智治 – アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。