はじめに
私は、過去の経歴からも、企業の意思決定をされている方々に提案をさせていただくことが多くあります。その時に、意識している反応の指針は以下です:
その方が、
- 「採用する理由を考えていらっしゃるのか」
- 「採用しない理由を考えていらっしゃるのか」
を見極めるということです。
採用する理由を考えるということ
結論から言うと、「採用する理由」を考えてくれているうちはまだまだ甘く、「採用しない理由」を考えてくれているということは、真剣に話を聞いてくださっていて、いろいろな状況下を想定してくださっている証と捉えるようにしています。
ところで、この投稿のきっかけは、今朝のツイートです。
ただし、大前提があります。それは、まず可能性がある、提案を聞いてくださる最低限の信頼関係があるということです。
たとえば、「あの会社は過去に痛い目にあったから信用ならん」とか、「あの人はだいたい適当なことしか言っていない。評判悪いから話半分で聞く」といった状況では、提案を聞く前から「採用しない理由」を固めていらっしゃるようなものなので、この指針は適用できません。
さて、私が提案や講演をした際にご質問やご意見で多いのは以下のようなものです。
- ○○と比べるとどうなの?
- ○○が導入進んでいるけど、どう移行したらいい?
- 上司(や部下)に納得してもらうためには、どういったらいい?
- (部下の方々に対して)予算は気にしない前提で、現場での適用と定着の課題を挙げてみてね
概ね、これらは、「採用しない理由」を考えてくださっていると捉えます。その提案がよいことはわかったから採用し、成果を上げるために課題は何か?何を克服すべきかを考えるモードになっていただけたという解釈です。
それに対して、
- □□がよかったですね~
- △△は他の方法でやっているので、□□で導入を検討しようと思う
- (部下の方々に対して)これと☆☆の機能比較表を作ってみてね
というのは、「採用する理由」を見つける反応と捉えています。この段階では、まだ「一生懸命提案してくれたのだから、検討をしてあげよう」というステージだと考えます。検討いただけるのはもちろん、重要ですが、これでは採用までの道は長いと考えます。
では、そのためにどういう提案をすべきなのか?については、以前に書きました。
さてさて、これを人事採用面接や、何か皆さんが取り組みたいことをチームや上司に提案する場面を想像してみてください。この指針って使えそうではないですか?(使えないと思った方はこのエントリーに価値はないと思いますので、以下読んでいただく必要はないかなと思います)。
たとえば、「JIRA Software を導入して、注力できる開発環境でクリエイティブな仕事をしたい」とか、「アジャイルなスタイルを身に着け、実践し、エンドユーザーのビジネスに価値を提供できるソフトウェアの開発にまい進したい」とかを提案するときを考えてみてください。
よくありそうな反応が、
- うちは他社と違うから
これは、残念ながらまだ信頼関係が弱いのかもしれません。門前払い系に感じます。
- 言いたいことはわかったよ。ROI を出してネ☆
- 想いはわかった
これは、「よい点を見つけてくれている」と感じます。
- それをチームに(上司に)にどう説明する?(自分はうまく説明できない → どう提案すべきか分かれば・・・)
- 外部の支援とかも考えてる?予算化は?(予算と実装が具体化できない → 具体化できる材料があれば・・・)
- うちでの事例はないんでしょう?(人柱ゴメン → 事例があったら乗りやすい・・・)
さて、このように、「採用しない理由」は前向きに検討いただいている姿勢というだけではなく、これらが顕在化してくると、フォローがしやすいというポイントがあります。懸案事項を挙げてくださるということはそれをクリアできれば、採用がまた一歩近づくということになるからですね。よい点だけを挙げてもらっているうちは、懸案事項は顕在化してきませんので、なんとなく好感触♥であっても、どんでん返しが待っているかもしれません。
本記事の執筆者:
長沢 智治 – アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。