この投稿は、「DoD Matrix at Sprint Planning」の翻訳です。翻訳については、著者の Slava Moskalenko さんに快諾いただきました。誤字脱字や誤訳がありましたらご指摘ください。
多くのチームが、新規サービスやプロダクトや複雑なプロジェクトでのデリバリーでイテレーションを採用しています。イテレーションの期間は、1ヶ月以内で、短期間のプランニングのセッションからスタートします。スクラムでは、イテレーションを「スプリント」と呼びます。そして、スプリントの終了時には、DoD (完成の定義, Definition of Done) に則ったプロダクトのインクリメントを成し遂げなければいけません。
完成の定義(DoD)
大部分の人は、プロダクトバックログのPBI (プロダクトバックログアイテム) として表現する大まかなユーザー要求と DoD を混同してしまいがちです。しかしながら、この2つは別の概念です!例えば、自分でデザインした家具を注文する場合、素材や大きさ、付属品などの条件を明確にします。違う家具メーカーにも同じ条件を提示するでしょう。あるメーカーは注文を満たす質のものを提供します。もう1つのメーカーは、数ヶ月後に急に低下し始めます。
2つのメーカーの違いはなんでしょうか?おそらく、ベストプラクティス、ツール、生産工程、プロ意識、チームワーク – スクラムが「完成 (done)」または、完成の定義 (DoD) として定義するものすべてです。
それぞれの組織において、提供するサービスの品質に影響を及ぼす DoD は、異なります。下の図は、ソフトウェア開発の DoD ではなく、「結婚式代理店 (Wedding Agency)」でのユーザー要求とDoD の例です。
複雑さ
この明白な「結婚式代理店」の例を見た後ならば、スプリントプランニンでは、PBI と DoD の両方を考慮に入れることが重要であることは明らかです。しかしながら、DoD にあるアイテムがとても表面的に扱われており、その結果として、サービスの質の低下につながっているとみています。どうやって修正したらよいでしょうか?
スプリントプランニングにおける DoD Matrix
チームでスプリントプランニングのツールとして、DoD マトリックスを用いると、品質に対してより責務を果たせる可能性がでてきます。以前の公開ワークスショップでは、ファシリテーターがこの DoD Matrix をオンライン形式で試すことができました。例を見てみましょう:
DoD Matrix の構造
- 縦軸は、プロダクトバックログからの要求(PBI)を表しています。図では、黄色のカードで表現しています。結婚式のサイト(Wedding site)やベジタリアンのための食事のケータリング(Food catering for vegeterians)、招待状(Inbitation cards)などです。
- 横軸には、DoD (完成の定義)のアイテムがあります。図では、緑色のカードで表現しています。
- 縦軸と横軸の交差するセルには、(次の)スプリントの向けた計画として特定のタスクがあるはずです。
- タスクの見積期間は数日間ですが、1つのタスクの大きさは1日以内とします(0.25, 0.5, 1)。
- すべてのタスクの合計見積数がチームのキャパシティを超えないようにします。
このように、ファシリテーター(つまりスクラムマスター)は、DoD をスプリントの終わりの検証チェックリストとしてだけでなく、プランニングのツールとしても DoD をチームに優しく取り入れられます。そして、チームは、プロセスの品質に責任を持つようになり、DoD を蔑ろにしないようになります。その違いは明らかです。
オンラインでのファシリテーション
- スプリントプランニングの前に、ファシリテーターは、 DoD Matrix を準備します。チームがリモートでコラボレーションできるようにするために、Mural のようなツールで DoD Matrix が使えるようにしましょう。
- チームのスプリントでのキャパシティ(日数 × 人数 – 休日と休暇)を見積もることから始めることをお勧めします。
- Zoom を使います。ファシリテーターはコラボレーション用のブレイクアウトルームを作成し、5分間、チームから離れます。5分後に戻ってきて、正しい方向に進んでいるかどうか、誤解がないかどうか確認していきます。
- 次にファシリテーターがチームから離れるのは1時間です。1時間で DoD Matrix が完了しない場合は、チームと相談しながら時間を追加します。しかし、プランニングの総時間は8時間を超えてはなりません!(※訳注: スプリントプランニングのタイムボックスは守りましょうという意味と思われます)
完成の定義は、自己組織化のための明確な制約になると、チームコーチングの強力なツールになり得ます。スプリントプランニングにおいて、DoD を適切に取り入れる DoD Matrix などのモデルを試す機会を逃さないでください。
Stay On the Line!
本記事の翻訳者:
長沢 智治 – アジャイルストラテジスト
サーバントワークス株式会社 代表取締役。Helpfeel Inc. アドバイザリーボード。DASA アンバサダー/認定トレーナー。
『More Effective Agile』、『Adaptive Code』、『今すぐ実践!カンバンによるアジャイルプロジェクトマネジメント』、『アジャイルソフトウェアエンジアリング』など監訳書多数。『Keynoteで魅せる「伝わる」プレゼンテーションテクニック』著者。
Regional Scrum Gathering Tokyo 2017, DevOpsDays Tokyo 2017, Developers Summit 2013 summer 基調講演。スクー講師。